コンピューターミュージックをやる人の言う『いい音』ってのは実は『三次元上で発せられたそのままの音』って意味で、何も滅茶苦茶に加工を重ねて誰も聞いた事も無いような音を作りたいと言っているわけじゃなく、ほんとにただ単にそのままの音をどうやったらコンピューター内で発せられるかどうかを指してるんだ。
和製英語で言うところのDTM分野だ。
最早この概念、DAWソフトに1ミクロンも触れずに音楽や録音をやる事って不可能だ。
便利になった覚えなきゃならないことも増えた分不便でさえある。
ヴォーカルに関してもそのままの声をどうやったら心地よく再生出来るかを常に目指して録音してるわけで、それがゲーム実況であれただの朗読であれ、音楽ジャンルじゃなくても今時は、音を伝える事柄ならどうしてもDAW知識が必要になってくる。
面白いのは、音ってのは食物と同じで加工を重ねれば重ねるほど旨味が潰されたり原型を留めなくなったりして劣化するって事だ。
発せられた生きた声ってのはそれだけでものすごい質量を含んでいるんだ。
誰かの生の声ってのは本当はそれだけで奇跡とさえ言えるエネルギーを含んでいるんだ!
…電気信号に比べたらの話だけど。
録音するってことは生の音を電気信号に変換させるってことで、音は電気信号になるや否や強烈に萎んでしまう。
その萎んだ音の粒をなんとか電気信号レベルに持ち上げるために、ケーブルを伝ってPC内に音源が組み込まれるよりも前に、バードのマイクプリアンプを設置しておく。
このプリアンプで倍増された音がインターフェースに入ってしまえばもう後戻りは出来ない。
IF装置は例えるなら物質音を完全に信号にしてしまう装置で、それをこの世で例えるなら火葬場みたいなもんか?…ってまあ、極端に言えばの話だ。
さて、完全に信号と化した音はPCという0か1かが基準となった世界を彷徨う。
これはもう我々三次元生物からすればどんだけ『小さく』なってしまったんだって嘆きたくなるような小ささなんだ、音の大小じゃなく質量の大小に於いて小さいって事…。
今の説明で録音された音ってのは根源的に録音元よりも小さく潰れている状態なのがなんとなく掴めただろうか?
この世は原則何だってそうだよ。
写真や風景画が現実の風景よりもどうしても矮小な存在であるのと同じように、元になる三次元データってのは莫大なものなんだ。
そんな風に、絵に描いた餅みたくなってしまった録音音声をどうやったら三次元で発せられた元データのように、本物の餅の如く復元出来るかが、コンピューターミュージック及び録音の要なんだ。
だから加工して美声を作り出すなんてことは元来成り立たないんだ、よく『音を編集すれば現実よりも綺麗な声になるんでしょ』って言われるけど筋違いだよ。
そうそう、話はちょっとだけ逸れるけど、眠っている時に見る夢、リアリティがあるとかいう次元じゃなくこの世を超えた強烈な色合いの夢を見た後なんかは強く思うよ、莫大な質量を感じさせる夢を見た後は強く思うよ、この世ってのもまた、もっと容量の大きい世界から見たら電子回路内の薄っぺらい次元に過ぎないんだろうなってね…。
色の中にさらに何重もの色や時空間が含まれているような素晴らしいものをどうやったら、この矮小化された世界に於いて復元出来るんだろう?って…そんなことをいつも考えて、音源作ってるよ。