ロートレックが死んだのがちょうど今の僕と同じ年の事だと知って久しぶりに絵筆を取ったんだけどやっぱり僕は…
ロートレックの奇形じみた外観と僕のそれが妙に似ているというのも知ってしまったんだけどやっぱり僕は…
ロートレックの身長が僕の身長とまさに同じだという事をも知ってしまったんだけれど
それだからといって僕が女たちと毎晩遊べるかっていうとやはり
そうじゃないんだ、僕はロートレックにはなれない
ロートレックとの類似点は足の悪い低身長の男だってことと、絵を描いている事
ロートレックとの決定的な相違点は彼は人間世界を何だかんだで愛しているんだけれど僕は到底そうはなれないってことだ
あれでかなりモテたらしいが残念ながら僕には、彼みたいに異様に発達した馬鹿でかいペニスも無い
悔しいけど僕はロートレックにはなれない
人間嫌いの脚の悪い男が描いた絵は即座に土に還る、そういうもんだろ、同じようでいて違うんだ
残念ながら僕は、北斎を愛したロートレックにはなれない
それでいいんだ、彼と同じようにみじめったらしい杖をついて
疲労骨折しやすい脚を引きずって、経年劣化と共に歩行困難に陥ろうとも
僕は杖の先をくり抜いて酒なんか仕込んだりしないし
車椅子にだってならないつもりなんだ、だから僕はロートレックにはなれないし
ならないと決めているんだ
どんなに親和性を感じても彼の到達点と僕のそれは哀しいほど相違している
僕はロートレックにはならない