森林の神だけが目を覚ましている夜明け前
土が銀色の死に装束を纏うようになったら、はしためである私に命令が下る
老いたる蒼き庭土たちに呼吸させてやらねばならない
蒼き土を屠るのだ死神然として
蒼き老婆の息の根を止めてやらねばならぬ
蒼き若葉という子を産み過ぎて息も絶え絶えの老いたる花嫁、さぁ休むがよい
命令と実行は合一となって語り掛ける、スコップを踏み入れた瞬間
真昼の閃光が走って
合一の涙が一筋
また一筋と血のように染み入ってゆく
蒼き土よ老いさらばえた我が身を憂うことなかれあなたはあなたはあなた方全ては
蘇るのだ
花婿を得てふたたび蘇るのだ
命が命が命が足りないのだ
人の手で無理やりに個という区分に雁字搦めにされたあなた方蒼き土よ
一年の間息を殺して耐えてくれたあなた方蒼き土よ
土に息をさせてやれという古の
言いつけ通りに植物を取り出して根掻きし自分にさえもしたように間引きをする
言いつけ通りに酸化した土を取り出して砂利とまっさらな土とに分ける
これは土の葬式なのだ老いた花嫁の葬式なのだ
悲しみに空も泣く
その酸性雨が骨粉だの牡蠣殻だのといった死骸で賄われるというのが心底
蒼き土のはしためである私の髄を揺さぶる
鬱蒼と茂る草の拠り所、生命の土よ
さぁ死んだ落ち葉から生まれた尊き花婿を迎えよ
種をふんだんに含んだ若き花婿たちを迎え入れよ
我が息子を迎えよ育て上げたかの青年を迎え入れ
神秘の合一をこの一年で果たすのだ
老いた花嫁たる我が蒼き土よいま蘇り
雌雄混合と相成って蒼き葉を茂らせよ
あなた方尊き土を一年の短き定めを以て殺し、また娶わせる私は
蒼き生命の賛美を
庭という祭壇に傅いて粛々と行う
一介のはしために過ぎない