散文詩【Mayday Mayday Mayday】

飛行機の中で君の言葉を初めて読んだとき、思ったよ、全部知ってるんだ、それで気が付いたら俺はもう恋をしていた。人間には残念ながら個人個人の行動を見守ったり誘導してくれる管制塔なんかありゃしない、それで墜落寸前になって改めて気付くんだ、よせばよかった。高嶺の花の君にそれとなく想いを伝えるなんてことがどんなに場違いかってことをあの時の俺に示唆してくれる存在はどこにもなかったんだ。人間の持つおかしな仕組みに、惹かれるものには絶対に衝突してしまうってのがある。しかも一回目の衝突ではそれと気付かない、二回目でもしかして振られてるんじゃないかって薄々気づく、三回目の愛の告白でようやく自爆したってことを自覚する。飛び散ってく肉片が自分のものだってことを知るんだ。それできれいさっぱり死ねれば誰だって苦労はしない。恋の炎で焼かれるのなら苦痛も快楽に変わる…一番きついのは、満身創痍の俺が事故後もだらだらと君の前に鎮座して人間関係を構築しなきゃならないってことだ。つまり恋の墜落は失恋そのものじゃあなくて、失恋後の漫然とした日々なんだってこと。今になってよくわかる、そういうわけで俺は今緊急遭難信号を出している…Mayday Mayday Mayday…もちろん人間の救難信号をキャッチして応答してくれる存在なんかありゃしないんだが、奇跡でも起こって俺をどこかの避難場所へと導いてくれる何かがあるんじゃないかっていう相反する思いを抱いて通信してるんだ、どうかこの想いから、助けてくれってね。