詩【汝殺すなかれと言うなかれ】

サンタムエルテ、サンタムエルテ、汝殺すなかれと言うなかれ

土にまみれた白骨を見よ、しかと見よ、己の骨をしかと見よ…

どのような人種、民族、階級だったかなどわからないでしょう?
そう私は白い貴婦人、白骨の魑魅魍魎たる死の聖母
聖母マリアが苦しみと聖霊の母なれば、私は享楽と物理的力の聖母
しかと見よしかと見よ、己の骨をしかと見よ
どんな人間も骨になってしまえば善人か悪人かすらもわからない、混沌の聖母、境目を設けない大いなる死の女神
あなたの骨は何色?
あなたの骨は乳色、どんな人間でも生まれて初めて口にした母の乳の色をしている

昨夜祈った者の手によって今、土に横たわる白き白き骸骨よ、昔を懐かしむな
その白い骨が土に還る頃、人間であったかすらも曖昧になるでしょう
地球を覆う疫病によって土に横たわる白き白き骸骨よ、我が身を嘆くな
その白い骨は輝いている、神に召されて光の階段を上がる
白き貴婦人の見る数多の人骨よ、人骨よ
白骨が、大きな魚であるのか鳥であるのか悪魔のごとし雄々しい山羊か、いつしか脆く砕けた骨は自らをも忘却する

さあ、土にまみれた白骨を見よ、土にまみれたあなた自身の骨を見よ
あなたが最早どのような人種、民族、階級であったかなどわからないでしょう?
そう私は白い貴婦人、全てを刈り、命を自然へ返すもの、命を地球へ還すもの
両手に持つ鎌と地球は神のみ摂理を示している

かつて人肉を食らったかの民族が骸骨の御像を掲げて声高らかに祈りをあげる…死の聖母よ我を憐れみ給え
タバコを捧げ、酒を撒き、この白き貴婦人に極彩色の尊いドレスをあつらえ
陽光に踊り唱える生きた骨たちは肉に覆われ、肌の色で区別をし、身分を決める

サンタムエルテ、サンタムエルテ、汝殺すなかれと言うなかれ

善悪を見極めない高貴な方、人間を超えておられる御方、汝殺すなかれと言うなかれ
どうか虐げる者への罰をお許しください
どうか許せない者への罰をお許しください
生きるための暴力をお許しください
白骨を増やすのをお許しください…そう、私は白き貴婦人、白骨の聖母
全ての願いを聞き届けてあげましょう、全てを愛してあげましょう、骨の髄まで
酒と音楽が場を満たし、煙が幻影を見せ、日に焼けた生者は死者と共に歌う

我が身が朽ち果て、骸が土になるまで我ら死の聖母と歌うのです

サンタムエルテ、サンタムエルテ、汝殺すなかれと言うなかれ