蕾や蕾 この庭の主を許しておくれ
増えすぎた球根のどれが誰なのかお前たちにはわかるまい
我を持たぬお前たちには初めに植えたその一株が
数十株にも増えたそのわけすらわかるまい
それを聖愚と言うのだ
蕾や蕾 この庭の僕を許しておくれ
黒よりも深い青の花弁もほれこの通り
抜いてしまえば皆彼岸花
望まれぬ子を
それでも宿して宿して選別して
あの子が欲しい そうしよう
あの子は要らぬ 我が手が切り株から滴る樹液で汚れているのをしかと見よ
それは赤い赤い彼岸花の色をしている
聖なるお産婆か卑しい詩を口ずさむ間引き婆か
お前たちにとってこの庭の私はどちらに属する者なのだと問うても
お前たちにはわかるまい
我を持たぬお前たちには最後に引き抜くその一株が
何を叫んでいるのかすらわかるまい
それを聖愚と言うのだ
蕾や蕾 と自責の念に駆られて歌う春が
いつの間にか満ち満ちている
ああ彼岸明けの間引き詩
詩【間引き詩】
