散文詩【逆さ年齢】

誕生日になったら、二桁の自分の年齢を逆さにしてごらんよ。31歳なら13歳、58歳なら85歳、19歳なら91歳…そんな風にしてもう一つの年齢と今の自分とが繋がっている事をきちんと認識した方がいい。僕は今37歳になったから73歳の自分と繋がってるって事を気にかけるようにする。これはね、面白いとか面白くないっていう話じゃなくて現実に本当にそうなんだ。果たして僕が73歳まで生きているかどうかはわからないし、45歳なら54歳っていう微妙な年齢を考えながら生きるわけだから、数字と数字の幅が広ければ何だか不可思議な感じがする、ただその逆に近ければ、時に後悔すらしてしまいそうなのが玉に傷でもある逆さ年齢。でも本当は自分が色んな時空間と繋がっているって認識を強めるのがこの逆さ年齢の意味なんだ。年齢ってのは時空間の一つの指標だから様々な道しるべにアクセスしてそこからヒントを得ようっていうのが逆さ年齢のいちばん良い数え方。一方で厄介なのはゾロ目の歳、33歳は神秘の年齢、77歳もそうだ、99歳も…この時は正真正銘その年齢に集中した方がいい。とはいっても…実は人間が自分の年齢を数え始めたのはつい最近の事だからまだまだ誤解も多いんだ。きっと17歳の人が71歳の自分を体感することは出来ないと、そう思われているだろうけれど本当は違う。全然逆なんだ、全部逆といってもいい。本当の意味では人間に年齢なんて無いんだ。一般的に原住民と呼ばれる種族の人たちの文化には年齢概念は無い、だってそのほうが健康で居られるから、年齢を意識しない方が実は合理的に生きられるんだ。僕たちの社会での82歳が高齢者らしく振舞う必要も無くて28歳くらいの感覚で居ればいいってことを思い出させるための、逆さ年齢に過ぎない。とはいえ49歳の人が94歳になった自分を想像していよいよ滅入るなんて事もあるだろうから、断っておくけど、高齢になったり禍福による見えざる影響を受けて一般的に活力の無い状態とされる年齢が必ずしも不幸な訳ではない。暗夜の中の聖然とした光、あるいは…高齢になればなるほど新しい生命の中に入ってゆく為に、一種の思春期を迎えることすらもまだ世の中には知られていない。創造力が増すのが老いた時期だという真実は何故かひた隠しにされているし、本当は全ての年齢の自分と呼応可能だということも伏せられている。本当に勿体ないよ。52歳の人が25歳くらいの活力を得ることも可能だし、24歳の人が42歳くらいの落ち着きを得ることも、自分の道しるべに触れることさえ出来れば十分可能なんだ。だから僕は逆さ年齢という思想を利用して73歳の自分に人生の静かな歓びと生まれたころから宿っていた神秘の活用方法を享受しようと思う。だからどうか皆さんも誕生日を迎えたら、あるいは今この瞬間からでもいい、二桁の自分の年齢を逆さにしてみてごらんよ!きっともっと人生は豊かになるから。