眠りに落ちる前に今朝方見た夢を僕は思い出す。その夢の中に出てくる自分の家に静かに入ってゆく…その家のある場所は、大きな湖の傍。その湖が何処にあるのかという疑問が言葉よりも先に沸き起こるが、それよりも遥かに前に答えを受け取っている。湖は、七つの夢のうちの一つの場所に在る、方位磁石では示せない時空間に確かに在る、湖の周りを取り囲むような小山、雑木林の中にひっそりと、別の夢へと続く小道がある。その小道を辿ると別の夢に向かう事が可能だと僕は知っていて、度々、ひとつの夢にうんざりすると抜け道をして別の夢へ向かう。その夢の中にもまた、僕の家が用意されている、誰が用意したのか?夢の創造主たるこの僕だ。僕は昔から家というものを持っているのだ。しかしどの家もうら寂しくて窓が開け放たれている…そして湖の傍にある、つまり湖の傍にある僕の家は、いくつもある、湖と同じ数だけある、起きている時に思い出せるだけで七つ、厳密に言えば七の七倍、おそらく七の七十倍、本当は七の七百七十七倍ほどだ。僕が沢山の土地持ち…曰く夢持ちなわけじゃなくて、僕は体質的に夢を沢山行き来出来るってだけだ。その夢のどれかは、誰かの夢に繋がっていて、僕はたまに夢で『どう考えても外部の誰か』としか思えない人物にも出会う。それ以外の夢の人物は皆僕の化身だ…どんなに醜くても、どんなに美しくても、どんなに嫌悪感を覚えてもそれは僕だと、夢の中のぼくも自覚している。しかし僕の夢世界以外の人間に夢で出会ったとき、確かに僕の心臓は震えている…誰なんだ?と問いかける、遠くで誰かが応答するのを僕はただ、はっとした気持ちで受け止め、そしてまた呼応する…ここで光が生じる…目が覚めた時、僕はまた一つの大きな、手ごたえのある夢のうちの一つに自分が迷い込んだのを悟る。この夢は、いつもの夢の最中のように初めのうちは『たった一つ』だと思い込んでいるが、たぶんいくつかある。おそらく七つくらい、本当は七の七十倍くらいの手ごたえのある夢を、僕は今見ている、全ての湖は地下深くで繋がっている。
散文詩【七つの夢】
