君は酸化しているのか
果たして酸化とは老化なのだろうか
僕は土に語りかけると同時に、君にも語りかける、君も土のように酸化しているのか?
一年経過して君は酸化した
ふと思う、土が植物を包み込む器であるならば…それは実に女性的な在り方だ
そして実際に女性の深部は酸性らしい
精液はアルカリ性だ
土に牡蠣殻を混ぜてアルカリ化させる
君に種を形式的に撒いて君を定期的にアルカリ化させる
耕して土を活気づかせる…
土の天地返し、これは交尾なのか?
僕は土を交尾状態へと整えているのだろうか?
君にそうするように、土にもそうしているのだろうか?
アダムがそう定められたように、男は女に対しても土に対しても
死ぬまで活気づかせてやらねばならない宿命なのだろうか?
そして僕自身の体も老化と共に酸化しているらしい、そんな馬鹿な
アルカリ化させるための食材を口に含む…これもまた若返りの一種なのか?
抵抗の一種なのだろうか?宿命への抵抗なのだろうか?老いへの抵抗なのだろうか?
果たして終に農閑期となるその時に全ての生き物は天に上げられるのだろうか?
僕は何も考えまいとしてひたすら土を耕してゆく
君を抱く時のように
酸化した土を耕してゆく
酸化の効能はひとえに殺菌作用である
老化と共に身体が酸化状態になるということはつまり
老いた体を守るための酸化なのではあるまいか?
しかしそれだけでは身体は活気づかない、土は活気づかない
女は喜ばない
活気、ただそれだけが生命の求めるものだ
交尾の土壌、ただそれだけが生命だ
そんなことを僕は考える、老いた僕は考える
やがて、誰に撒くわけでもない種のついに潰える時
…僕はおそらくもっと冷静に生命を俯瞰するのだ…スコップを持つ手がぐらりと揺れた
僕は生きる、君は生きるのか?君は酸化してゆく
僕は君を耕す
土を耕すの同様それしか選ばざるを得ない
もう持ちたくないと思っても僕はスコップを握り締める
酸化した君を僕はせめてもの慰めに耕している
理由なんて生命同様、無いのだから