
植物たちが何を考えているのかは不明だが…
薔薇は、意味が無いことこそが美の境地!と、人間に教えてくれているような気がする。
殺虫剤などは一切使わず、ラベンダー酢や木酢液を振りかけて予防らしきことをしているので、虫も来るが薔薇の勢いのほうが圧倒的に強い。

これほど美しいものが漫然と存在していることにただ感動する。
よく注意して嗅ぐと、同じ株から生えている花であってもひとつひとつ香りも異なる、桃のような甘い香りや、レモンを思わせるものもある。
そうやって無心に香りを嗅いでいるとき、私は真に誰でもない人になり、自分や他人の境界線や、価値観がなくなるように感じられる。

花びらに触れるとき、静かな喜びに満たされる、このようなときに感謝を覚える。
この世が『在る』ということへの感謝だ。
そうでなくとも植物たちは、何だか宇宙的な生気を帯びているので、植物に感嘆している時というのは大抵、宇宙そのものに感嘆しているとも言える。

薔薇に関して言うなら、いちばん艶やかな頃よりも、多少傷んできたくらいがいちばん美しい。
…というのも、花びらの数が(薹が立つと)いきなり増えて、とても豪華になるからだ。

一体どこからこんなに花びらが出てくるのか、毎日見ていてもよくわからない、(咲いている過程で形成されるのか?)謎である。
花の一番濃厚な時期に、私は、死神よろしく花首から一気に刈り入れし、家の中にその香りを持ち込む。
雨が降っている。
庭で薔薇が歌っている、雅歌の世界がそこにある、ギターの音色が静かに響く、誰かが歌っている、私が歌っている…泣いて生まれたのであれば尚更、唄って死にたいものだ。