リネンワンピースと弓懸職人(ブログ)

縁というのは不思議なもので、弓懸(ゆがけ)職人と話す機会を得た。

私なんぞはその辺から湧いてきたような人間で、はっきり言って何一つ背負うものは無いし、何をやろうが作ろうがそれは思い付きに過ぎない…と言ってしまえる一方で、代々の技を受け継いでおられる職人という存在も、創作稼業には在るのだ。

弓道で使用する革手袋の事を弓懸(ゆがけ)と言う、弓道の会合を射会(しゃかい)と言う…世の中は広いなあ。

さて実際に弓懸を見せてもらったところ、箱から出されたそれは生き物のようであった。

…しかしまあ、それは残念ながら私の作品ではないので、代わりに作ったワンピースの写真でも載せておきましょう。

弓懸の何が生き物めいていたのかというと、その立体性である。

革手袋…と言ってしまえば簡単そうに聞こえるし、実際にただの革手袋ならば、洋裁マニアであれば縫えると思う…というのも洋裁、特に型紙で作る(裁縫)洋裁というのは、あくまでも平面制作だからだ。

要するに今、私が弓懸を作ってもミトンにしかならないだろう。

ただの革手袋を、きちんとした立体にさせるのは針の打ち込み方(縫い方というよりも打ち方みたいな感じがする)や方向性を考えなければ不可能だということは、本物に触れたときに実感した。

となるとひと針ひと針の重要性は否応にも増す…ので、そのひと針の間に、職人の胸中に種々の想いが逡巡する場合も多々あろう…。

今回のリネンワンピースをほぼ無意識に作りながら、そんなことをふと思い、若き職人である彼に少なからず共感した。

ひとつの完成品を作り上げる苦心や努力に、その実、共感した。

私は思考が遅くて、早くて数日、あるいは数週間もしてようやくその人の言わんとする事がわかったり、自分の思考が言葉になったりするので、いつももどかしい。

もっと一瞬で伝えられるものってないだろうか?と、常に表現手段を探している。

…とは言っても口先だけで安易に「モノづくりって大変だよね、わかる!」などと言うのも憚られるので一応、自分の作った新たなワンピースを以て、手作業や針作業への敬意を示してみた次第である。

陰ながら?応援しています。