自作短編小説

【自作短編小説】

短編小説【森の神の系譜】

「待っていたよ、ムスビ、君を待っていたんだ、何十年もの間君をずっと待っていたんだ、さぁ僕を殺すがいい」
【自作短編小説】

短編【ほら吹きお銀】江戸時代イメージ小説 

「あの人…ここから桃をとってきたのか…この桃はもともと、私たちの殺したものたちの血が入っていたのか…あの人もそうと知らずに私に渡し、私も、自分では食べもしないで売りさばいていたのか…でも、今はすっかり清らかになっていて本当に美味しそう」
【自作短編小説】

短編小説【木になった男】※個人的おすすめ小説

男はやがて痒みの発作後にもそうであるように髄を密かに発光させて息絶え、今まで外界との境界線としての役目を生まれ出でて一度もまともに果たさなかった役立たずの皮膚は脆い菓子のように砕け散り、種々の養分は化膿した表皮を押しのけてその肉体から溢れ出た。根を伝って彼は細かく山の四方八方へと運ばれた。その不可思議な死生の旅程の中で幾たびも自国の神話の根の国の話や黄泉の世界の概念などを思い返しては感嘆し、土中に分散しても尚男は自我を保って木々に問いかけたり一緒に歌ったりしていた。
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短編【最後の、森の人】縄文時代イメージ小説

女は霊魂となって『今』でも森の中、様々の時間の一点に向かって語り掛けているのだ、よって森は今でも続いている、焚火は今も尚燃えている…森の人の時代は今でも続いている。
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短編【光る酒】江戸時代イメージ幻想小説

手荷物をひったくり、武者震いのようになっている手で風呂敷を解いて一口煽った。 …頭の奥深くに光る酒が染み込んでゆくのがわかる…! 斧が目の前に落ちてようやく自分が酔っ払っている事に気付くと彼は酒と斧とだけを持って小屋に引き返した。
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短編小説【悪人の花壇】

老婆は中年の孫を見て微笑んだ。男が黙っているのを見ると独り言のように呟いた『街の中心広場がごみ溜めじゃあこの街は遠からず終わる、今よりもっと腐敗するよ、勿体ないね、せっかく聖者様が信じる者たちを連れてきて住まわせたのがここの始まりなのに…本当は誰かが何とかしなくちゃいけない、でも見て見ぬふりさ、あたしだってそう』 南米イメージ小説。
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短編【浄瑠璃人形花鈴奇譚】江戸時代イメージ小説

一体の浄瑠璃人形に心を奪われた米屋の若旦那、冷ややかなその妻、人形と人間の織り成す江戸時代イメージ小説。
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短編【鬼子母神の涙】江戸時代イメージ小説

女罪人は一人せせら笑った。それがあまりにもあっけらかんとしていたので坊主は図星を突かれたにも関わらず怒りの感情が湧かずに岩や石ころだらけの足元を…多少曲がった脚をじっと見つめていた。子殺しの女罪人は続けた。「だから罪人の仕置きをやらされてるんだねえ」
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ショートショート【紅い骨】

真夜中二時の美術大学に僕は今、忍び込んでいる。
【自作短編小説】

短編小説【登塔者の炎】

中世…塔に籠る聖者が居た、聖者の見ている聖なる幻はいつしか隣の塔に住む若い娘にも見えるようになり…【登塔者(とうとうしゃ)の炎】ロシア正教では塔に登って修行するという修道スタイルがかつて実在したようです。