散文詩 【神なるX】AyaOgata作

散文詩 【神なるX】

全ての命の意味は 神なるX 神なるX 神なるX 虚空を中心とした集合活動に過ぎない
加速度的に中心へ向けての運航が連綿と成されるが
未だ到達した者はいない
何故なら全ての中心は永遠に辿り着けない無であるから

神なるX 神なるX 神なるX あなたは無であられる

前へ進めば進むほどに遠ざかる空白の一点
この空白を取り囲むように
諸処の寄る辺なき質量群が列を成して
さらなる生成に励むのだ さらなる遠征に励むのだ この世そのものが生成という戦いである
神なるX 神なるX 神なるX あなたは
存在し得ない無であられるが故に
我ら被造物を血の汗を滴らせるほどに駆り立て
虚空を中心とした集合活動を
永劫的に課される 涙の谷に住まう我らを尚も涙させ 請い求めさせる

我らが中心へと動けば動くほどに 神なるX 神なるX 神なるX あなたは
手の届かない地点へとお逃げになる
我らがそこへ行こうとすればするほどに我らは自らの質量に足止めを喰らい 神なるX 神なるX 神なるX あなたは
存在し得ない無であるが故に
全ての質量から 全ての情報から 全ての意識からさえも お逃げになり完全な無と成られる

完全な無を示すには
完全な質量や情念を示さねばならない
完全な無を描こうと絵筆を取っても 中心を空洞にしない限りはあなたを描くことは出来ない
あなたの首をすげ替えるような事をして あなたの空席に数多の偶像を座らせても あなたは怒ってさえくれない
神なるX 神なるX 神なるX 永劫なる無よ どうか我らを憐み給え

我らに宿命的に課されたのは無を中心とした集合活動を続けること
寄る辺なき羊たちよ 間違っても問うてはならない こうまでして何故このような事をと問うてはならない
自らの谺に 死して尚惑わされたいのか 死して尚浄化の炎に骨の髄まで焼かれていたいのか

それでも
神なるX 神なるX 神なるX あなたは
まさに我らをして おわします無であられるが故に 何処にでも存在しておられる
あなたは無であられるが故に 無を示す存在である有象である醜い我らをして その存在を指し示しておられる
中心に虚空 その虚空を形成する有象 我らの本性は全一 
寄る辺なき我ら全てが 神を形成している
よって我らは宿命的に救われている

神なるX 神なるX 神なるX あなたは 慈悲深き無である