詩【蝙蝠の歌】

生きるということは 神様がたった一瞬触れていてくれること だけど生き続けては駄目
死ぬのは神様が手招きすること だから殺しては駄目

蝙蝠が夕闇に歌う

これはあたしたちの歌
人間には通用しない情緒で噛みつき
糞をし、生殖し、人間と同じように会話しながら一生を全うする
道筋を辿れば我々と同じもの
道筋を辿れば我々と言えるもの

ひとつの種にとって都合の悪い生き物を消せば
ひとつの種にとって幸福かというとそうではない

ああ撃たないで撃たないで
毒を撒かないで撒かないで
刈入れだと嘯いて
悪を消そう等と
躍起にならないで頂戴

だってあの人間はあたしなの あの蝙蝠はあたしなの
夜空を歌うあの蝙蝠はあなたなの 
蝙蝠はつまり、我々なのだから

どんな危険なモノに対しても宿主になれる生き物を
穢れていると言って殺してはいけない
猛毒すらものともせずに飛び回る蝙蝠は
遍く哺乳類にとって、頼りになる親類でさえあるのだ

一つの分岐点で道しるべを掲げ
歌っている蝙蝠


蝙蝠がハクビシンにもたらし
蝙蝠がラクダにもたらし
蝙蝠がセンザンコウにもたらした不都合を
そこまで嘆く必要は無いのだと蝙蝠は歌う

これはあたしたちの歌 これは蝙蝠の歌

生きるということは 神様がたった一瞬触れていてくれること だけど生き続けては駄目
死ぬのは神様の元へ還る事 だから殺しては駄目  

生と死の全てを記した暗号を 蝙蝠は懐に持っているのだから

懐に 持っていてくれるのだから