エルドラド

まだ関東平野が大森林地帯だった頃の名残を留めている森みたいな場所。私はここを超個人的に『エルドラド』あるいは『秘宝の眠る場所』と呼んでいる…何故秘宝なのかというと腐葉土にするのにぴったりの落ち葉が大量に落ちているから。

これはおそらく都が所有する場所で、たぶん東京都に問い合わせたら落ち葉を拾うのも駄目だろうから私は間違いなく窃盗をしているのである…いやいや、だって、そんな大げさな、花壇を作るためだもん、等と言い訳してみても駄目だ、正々堂々窃盗をしている。ついでに言うと花壇も、市の職員には正々堂々と名乗って話はつけてあるものの、合法とは言い難い(完全に違法とも言い難い)。地域の人に一番ウケの良いものがこんなにも法律的にグレーだという事がなんだか可笑しいが、人の喜ぶことが必ずしも法に則っているわけではないといういい例である。

この小規模な森には、以前狸と白鷺を埋めた。狸は大通りで轢かれており、白鷺は川に浮いていたのでこの森まで持って来て埋めた。白鷺の死骸は埋めるまで横たえていたら目を閉じていた…そんな不思議現象の起こる森で落ち葉を拾う、腐葉土部分も分けてもらう。

王墓を守る兵馬俑といった体で藪蚊が押し寄せて来る、目玉虫の襲撃も酷い、宝を盗んでいるのだから当然だ。ここがもっと田舎の場所で、尚且つ特に腐葉土生成業務に使用していない場所だったのならば精神的に楽だったろうが…四の五の言っても仕方がない、もし誰かに注意されたら平謝りするしかない。

何故私がこの森の落ち葉に拘るかと言うと、以前これを使って庭用腐葉土をこさえたところ大変に出来が良かったからである。そして買ってきた腐葉土の…生気の無さと比べるとあまりにも生き生き、ほこほこ(?)とした感じの、食べてしまいたくなるような見事な粒状の土が完成したからである。以来この土地に住んでゴミ拾いをしているのだから、拾ったゴミよりも少ない分量であれば落ち葉を頂戴してもいいのではないか?と至極勝手に結論付け、土地の神に許しを得たような気分になって毎年数袋の落ち葉をもらってきている。

良い落ち葉というのは本当に美味しそうで、手で触った感触もいい意味で暖かい。落ち葉を食べる虫(ダンゴムシとか)の気持ちがよくわかる。前世(魂が単一だと仮定、時間が一定だと仮定した場合)は枯れたものを食っていた虫だったのかもしれない。

多少なりとも土いじりをする人間にとって質のいい落ち葉ほどの宝はそうそうない。どうかエルドラドが私に開かれたままでありますように…。