すばらしい青の世界!

自分でも不安になるほど私は計画を立てて物事を遂行するのが苦手である。計画、というとざっくばらんな言い方になるが…時系列で物を考えるのが生来非常に不出来で、スケジュールや場所、量、そういった概念が私の頭の中では全部ところてんのように差異なく繋がって、思い付きでそれを実行したりしなかったりして生きてきている。私が自分の頭が悪いと思うのはまさにこの点。ついでに言うと物の数や時系列的な意味での記憶力も信じられないほど弱い、よく、老人になったり認知症になると時系列という概念が崩壊し、手順を忘れたり数量を測れなくなったり財布の中からアナログ紙幣を勘定通り出せなくなると言うが今の時点で結構共感出来てしまう。

でもさ!この世界の物や数や品名って、つまるところ『熱量や光』みたいな元来ひとつのものじゃない??…等と御託を並べても始まらない。苦手な事をやらなければならないのである。

こんな調子なので植物を育てるのも今まではほぼ直感+せいぜい年に一度耕して土を調整すればいい、くらいにしか考えておらず、当然のことながら誰かに見せるための栽培などしたことは無い。第一に植物は生き物であるので、その発する信号のようなものを何となく野生の勘で感じ取って花柄摘みやら、腹を空かせているようであれば肥料を与えたりしてきだだけで、これは偶然波長が合っていたに過ぎない。

腐葉土に関しても、私が自家製(葉っぱは堂々と都所有の土地から盗んできたものだが)腐葉土に拘るのは、下手にそこいらの安物の腐葉土を使用してしまうと、腐葉土制作業者によっては殺虫剤が染み込んだものなどもあるので、本物の環境汚染をやってしまう恐れがあるからだ、とはいえあまりに頻繁に森から葉っぱをもらうというのも考え物なので金はかかるが農薬不使用殺虫剤不使用自然熟成を謳っている高い腐葉土をいくつか買うしかない。

環境汚染をせず、殺虫剤を使用せず、それでいて年間を通して何となく花の咲いている状態を保つにはどうしたらいいだろうか…?

そう、これは花壇計画である。花壇を運営(半違法)するにあたって私はおそらく生まれて初めて『時系列で物事をスケジュールを立てて遂行する』という…ごく普通に皆がこなしているであろう試練に立ち向かう事に相成った。

年間を通して何かの花が咲いている状態を保つ…これは自宅の庭のように年一回耕せば済むという訳には行かない、第一に草花の成長というものは大体半年ほどかかる。草花というと春に植えれば初夏には咲きそうなもんだが実際には異なる。特に冬季を挟むとなると…早春から咲いてくれるものを植えるにしたって、秋から植えるという事になる。秋から植えるのであれば最早一刻も早く球根なり種なりを入手せねばならない、第一に何をどう植えるのか?背丈は?色は?そして花の咲く時期は…???

丸三日ほどかかって青系でまとめようというイメージの元計画を進めた、初春というか実際には真冬くらいから咲き始める花が欲しいがなかなか無い、在っても今はまだ暑いので、むしろ苗よりも種のほうが都合がよい。そんな花で尚且つ青い物となるとあまり無いので仕方なく白系の花の種にする。よしんばそれが冬に咲いたとしても春に枯れる可能性もあるので春に咲く青い花も用意したい、しかしこれは球根の方がよい…それらを数種類吟味した上で一番大事なことを思い出す。

大勢(近所の人)が見るということを前提とするならば、少なくとも春に開花するメインの花は誰もがすぐ名前を言えるような花が良いのではないだろうか?

しかし安直すぎるのはちょっと嫌だ…というひねくれた気持ちも湧く、しかも青がいいと直感が囁くので青系+白系ですばらしい青の世界を春先に実現させたいという野望は我ながら強固で、ギリギリみんな知ってるかなという花の球根を選ぶ。

おわかりだろうか?花を選ぶというのはほとんど常に前倒し状態なのだ、秋に植えて春先に咲く球根が欲しいと思ったらもう今すぐ、夏の終わりのこの時期から闘いは始まっているのだ。早速球根の予約をする、混色だの混合だのといった余りものの詰め合わせはいつでもどこでも手に入るが、一色の花が大量に欲しい場合やこれと決めている品種のある人なんかは春の花を夏には既に決めている。ああ…こんなに厳しい世界だったなんて…。

ああ…頭がパンクしそう…自分の書いた録音配線図を見て気持ちを落ち着けようと思ったが若干月日が経っていて微妙に意味不明でかえって不安になってくる始末。話は逸れるが録音のアナログ機材は電流を通すと『生きている!』という感じがする。目的をもって生きているのだ、それは植物が養分や水を身体に流しているのと同じ摂理で、機材もまた生き物なのである…。

さて、私がこうも焦燥感に駆られているのは植物関連の業者は他の在庫を抱えた商人とは違って何となく商売っ気が無く、入金したんだけど連絡は取り立てて無かったりして結構不安になる事が原因でもある。慣れてくればもう少し落ち着いてコンスタントに『時系列』で考えながら花壇やら録音やら絵やらを回してゆけるのだろうが…。

花壇は秋と初夏に耕して植え替える予定を立てた。年間で言うとざっくり、冬~春の花壇、春~晩夏の花壇といったところか。年に二回テーマカラーを決めて、わかりやすいメインの植物を中心に数種類の花で囲む感じを目論んでいる。

録音同様全て実験なので、うまく行くかどうかは実はあまり考えていない…だが、花壇を作るのは私でも、さすがに花の種や球根までは生み出せないので、この点に関する無力さは拭えない。花を交配させたりしたら面白いだろうなあ…。私の中ではもうすばらしい青の花壇が目いっぱい開花しているのだが…果たしてすばらしい青の世界は実現するだろうか?今の時点で言うとそれは植物販売業者の側にかかっている、頼むからはやく発送してくれ…。

※無事到着した種を見て、そのあまりの少なさに愕然とし、花壇は簡易な方向へと計画を練り直し中である…。