【自作短編小説】

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ショートショート【素裸の佯狂者(ようきょうしゃ)】

神の子が地上で磔刑に処されてから幾百年、牧草地を横切り、荒野を彷徨い歩きながら素裸の佯狂者の男は両手を世界へ向けて広げた。全ては神の恩寵に包まれていた。
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短編小説【モグラ男】SF

『俺は地上に居るべきじゃない、地中を泳ぎたいんだ』この発言から彼のあだ名はモグラ男となった、かくしてモグラ男は地中を泳ぐ事となった。 ほのかなSF短編小説。
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散文詩【因果律の都】

「世界を一度破滅させなきゃいけないんだ、わかるかい、これは聖戦、君ならわかるはずだ、今支配しているこの思想体系に於いて異端である君ならばわかるはずだ、魂に問いかけるまでもない、君は悩んでいる、しかしその悩みは辿っていくと社会に結びついていることを多くのものは認めようとすらしない。」
【自作短編小説】

ショートショート【死後空港】

女は意識が遠のいてからの日数を覚えておらず、気がついたらこの空港へ来ていた。 自分の肉体が、あの趣味の良い静かな家の中で腐敗し、破裂し、どこからともなく小さな虫たちが湧き出でて、彼等の新たな王国の苗床になっていることなど女にとってはもう些末な事柄だった。
【自作短編小説】

ショートショート【僕は夜の浜辺で電話帳を燃やしていた】

僕は夜の浜辺で電話帳を燃やしていた、バイクは道路の脇に停めてある、地元の浜辺には今、僕一人しか居ない、夏場はここに幽霊が出るという理由で人が探索しに来たりもするけど冷え冷えとした夜には幽霊を含めて誰も来ない。
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ショートショート【アカペラ少年】

ステージの中央に立つアカペラ少年はにこやかに唄っていた、たった一人の男子中学生に大勢の拍手が浴びせられる、アカペラ少年は妙に場慣れした様子でお辞儀をした。 奥様方、ご静聴ありがとうございます、とでも言いたげに優雅に礼をした。 制服のスカートがきつい、どういうわけだか胸を締め付ける構造の紺色のベストもきつい、この沸き立つ空気も…私が吸うには色彩が明るすぎる…少女はそう思い身を固くした。
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ショートショート【Maybe Angels】

褐色の肌をした老婆は道路へと一歩また一歩と踏み出していた、売春宿へと続く干からびた道を老婆はよたよたと歩き、一つ一つ、投げ捨てられたゴミを丁寧に拾っては袋へと入れていた、その袋からは拾ったゴミがぽろぽろとこぼれ落ち、再び路上へ転がっていった。
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ショートショート【紅い骨】

真夜中二時の美術大学に僕は今、忍び込んでいる。
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短編小説【登塔者の炎】

中世…塔に籠る聖者が居た、聖者の見ている聖なる幻はいつしか隣の塔に住む若い娘にも見えるようになり…【登塔者(とうとうしゃ)の炎】ロシア正教では塔に登って修行するという修道スタイルがかつて実在したようです。
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短編【船幽霊(ふなゆうれい)】江戸時代イメージ小説

寒漁村…船貸しに嫁いだ嫁の逢瀬の相手とは?江戸時代イメージ小説【船幽霊】をお楽しみください。