詩【踊る炎と一緒に私も踊りました】

踊る炎と一緒に私も踊りました
火はしたたかに燃え移り
あっという間に祭りの広場のすべてを飲み尽くしましたが私たちは踊りをやめませんでした
以前花びらで出来た踊り子たちの衣装を羨ましい気持ちで眺めていたころ、細い銀の糸に花を括りつけ
銀糸を身体に巻き付けて所々の花のつぼみだけが自分を隠すようなドレスを作ったのです…
踊り子を真似て邸宅の庭で月光を浴びながら踊りました
身体は次第に熱くなってゆき
隠すべき部位に触れる花の房が揺れるたびに小さくため息をつきました
そうしているうちに熱くなった花弁が密かな光を垂らし始めているのを感じて私は小さく笑いました
軽やかに舞う毎につぼみが花開き
いつしかその花の房は私の動きに合わせて散っていったのです…
それを見つめるいくつもの
庭へ忍んできたであろう熱を帯びて輝く瞳と出会い
内心戸惑いましたが踊りをやめることが出来ませんでした
ああ、私のような女は恥ずべきものです
ついに身体に食い込む銀糸だけが私の衣装となったのです
それでも彼らは踊るようにと目で促し
私もその呼応に答えて足を開き、蜜を垂らしながら舞っていたのです
いつの間にか幾人もの人たちと輪になって回っていたのを覚えています
その輪が私を持ち上げ
私を包み
あたり一面が朝焼けの炎めいた光に包まれた時には私は幾人もの人と繋がっていたのです…
それを見たある客人はひどく嫌悪してこの邸宅から去ってゆきました
そうです私は嫌悪させる者なのです
その出来事があってからは月夜が訪れるたびに銀糸を肌に食い込ませ
局部が隠れるように花を結うようになりました…
私はうっとりと銀糸と花とを纏う自分の身体を見つめ
肉体の賛歌を声なき声で歌いながら庭へ駆けだして舞ったのです
そうせずにはいられなかったのです…
糸が擦れるたびに私は悶え
悶えつつも花びらの散るのを一種の渇望を覚えながらひたすらに待ったのです
踊りながら待っていたのは私だけではありませんでした
彼等もまた夜半を過ぎるころには服を脱いで踊ったのです
私たちは誰も言葉を交わしませんでした
花弁同士を擦り付け、雄しべと雌しべとを互い違いにさせながら交わっているその時ですら一言も囁かなかったのです
罪の女である私は
身も心も朝焼けのように赤く染め上げたいという熱望を抱き
最後の晩に私はまた銀糸と花の衣装をつけ
祭りの音色に合わせて足を目いっぱい広げて踊りました
誰かが私の心を読んだのでしょうか…
気が付くと
祭礼花火の燃え残りが飛び火したのか…
炎がそこここに燃え上がっていたのです
けれども炎もまた生命の踊りを営んでいるのだと私にはわかりました
だから
踊る炎と一緒に私も踊ったのです
火はしたたかに燃え移り
あっという間に祭りの広場のすべてを飲み尽くしましたが私たちは踊りをやめませんでした
炎のただ中で焼かれながら交わり続けた他の人々とてそうだったのです…
朝の庭には私を含め
焼け焦げた数人が寝転がって萎れた花のように息の根を止めていましたが
誰も神に許しを乞うているわけではありませんでした
こうして命のダンスが止んだ今ならば静かな心でこう言う事が出来ます
この世はすべらからく命の輪舞をしていると
背徳でも愛徳でもないところからそう言えるのです