散文詩【僕はずっとあなたを探していた】

僕は探し回った、あの時代、あの場所、僕は探し回った、風の中を、人ごみの中を…それでもあなたは居なかった、神の声を聴いたと言うあなたは、まだ若さの残っていた時期の僕の行動範囲の何処にも居やしなかった。それでも僕は必死で探していたんだ、あれでも僕は必死で探していたんだ。ただ会って話がしたかった、伝播する光の話をしたかっただけなんだ、その地点で理解し合える誰かを必死で探していた。つまり僕は見ず知らずの他人を恋し、愛し、切望していたのだ。あなたの外見すら、年齢すら、性別すらも曖昧なまま僕はずっとあなたを探していた。あなたがこの世に居るという確証すら得られないまま、夕暮れ時に街まで来てあたりを見回すあの感覚、焦燥感…それを若さだ等と一括りにして笑わないでほしいという理由から、僕はこの衝動については誰にも話さずに居た。その時々の恋人にも、その時々の友達にも、誰にも。そうして隣に誰かを並べながらも僕は生命力を懸けて都市を縦横無尽に歩き回り、全てが徒労なのではないかというささやかな絶望をも、笑って紛らわした。大気の中に、時間の中にきっとあなたは居る、そう信じていたから、全ての呼応が生じる知覚外の地点へと僕は意識を飛ばして呼び続けていた。こんなにも帰結する誰か、あなたを、僕はずっと探していたんだ。ただ残念なことに、ついにあなたを目の前に実感したその時には…最早、僕の人生の大半が過ぎ去ってしまっていたのだ…。