散文詩【生命の知恵】

見聞きしたことが無くとも、心でだけ触れたものを人間は知識として持ち帰ることが可能だ。しかしあまりにその推進速度が速いと、身体の方が耐えきれずに消耗してしまう事もある…心や魂の地点では、遥か昔から人間は数多の生命と知識を共有していた。こうして触れた知識を知恵として持ち帰る事の出来たものは、虚脱しつつも至福感覚を得る。問題は、知恵に触れた当人が若干の変容を経て肉体次元に戻ってくるという事だ。生命の知恵に触れたものは多かれ少なかれ別人になってしまう。それが為に違和感を拭いきれず、迫害されたり、はたまた自分の方から周囲と距離を置いたりする。…無論、この知恵に一瞬も触れないで過ごす人間など、何処にも居ないのだから、人間は絶えず生まれ変わり、生命は耐えず関係性を変化させて邁進する宿命があり、全ての生命は生命の知恵の具現化であるとも言える。